2014.1.4
僕は天野祐吉さんのCMコラムが好きでした。その文章が3.11を機に変わっていった。天野さんがもっていた消費社会に対する批判精神がよりいっそうはっきりしてきた。人口が減る、高齢化もすすむ、日本はこれから成熟した社会になる。にも関わらず、まるで高度経済成長期のような動きをする国や経済に対して、疑問の声を投げかけていた。もちろん広告業界に対しても。著書「成長から成熟へ。さよなら経済大国」は昨年末、亡くなられた天野さんからの最後のメッセージだ☆3.11以降、僕も広告業界の人間としてできることは何だろうと自分に問い続けてきた。今まで僕は日頃の広告業務を通じて社会に貢献することができる、そう信じてやってきた。CMを作ることで消費者を刺激し、購買へつなげ、その結果、企業が儲かり、みんなが潤う。あれ?それって今までの経済政策といっしょで、つまりそれをやっても今までとは変わらないなってある時気づいてしまった。それから僕は、企業や商品の課題をアイデアで解決していくという広告クリエイターとしてのスキルを、社会の課題解決のために使おうと思うようになった。そしてルトワを立ち上げた☆一度、ツイッターで天野さんにメッセージを送ったことがあった。僕は今、広告屋としてこんなことをやっていますと。まったく面識もない僕に対して天野さんは「すばらしい試みです。がんばってください」と言葉。その時勝手ながら 氏の遺志を継いでいく事を誓った。天野さんのもつ、批評精神とユーモア精神をもって。
2013.12.10
こんにちは!本日のご紹介は「ルトワード」。この企画は「これ、今、知っておくべきでしょ!」という社会用語や経済用語、政治用語をひとつ取り上げ、それをイラストレーターといっしょに一枚絵で表現してみようという企画です★今回の用語は、本誌のテーマでもある「ソーシャルインクルージョン」。今、政権が目指し、マスコミでも当たり前とされてきた「規制を緩和して大企業が儲かれば、社会全体が豊かになる」という考え方とは違う社会理論です。ヨーロッパではメジャーな考え方で、ユーロの成長戦略にも採用されています★今回参加していただいたイラストレーターは、Noritakeさん。「ブルータス」をはじめ様々なメディアで活躍されている方で、Le toit【ルトワ】の編集方針に賛同いただき、参加していただきました★「ソーシャルインクルージョン」は様々な解釈ができる考え方。民主党政権下では、「誰もが居場所と出番のある社会」と定義しました。「競争社会」ではなく「共生社会」という人もいます。「奪い合い経済」ではなくで「分かち合い経済」という人もいます。それゆえに「一枚絵」で表現するのはかなり難しかったと思います。Noritakeさん、ありがとうございました★また本誌「知ルトワ」掲載のソーシャルインクルージョン研究の第一人者である中央大学教授・宮本太郎さんのインタビュー記事も合わせてご覧ください。次回の言葉は「トリクルダウン」です。ご期待ください。
2013.12.06
おはようございます。朝からちょっともやもやしていることを書きます。いま現政権は、二つの大きな選挙の時から目指していたことを着々とすすめています。それで国民に選ばれたわけですから、当然、それを着々とすすめていくわけです。TPP、国家安全保障会議の設置、集団的自衛権の行使。大切なことは、国がそれらの政策を通じて、どんな方向を目指しているのか、を知ること★国は、それらの政策を「国益」と考えています。信念をもって。そして僕らは、どうしてそれが国益なのか、をもっと知るべきだと思います。(一方で国はそれがなぜ国益なのかをもっと「わかりやすい言葉」で伝えるべきだと思いますが)自戒を込めて言いいます。国の目指す方向をまず知りましょう。知った上で、賛否を語りましょう。知らないで賛否を語るのは感情論になります。結局「強行採決はけしからん!」という波がおさまれば、いつもの日常に戻ってしまいます。そうやってずーと政治に対してマスコミや国民は接してきたような気がします★ルトワはそんな政治とみんなとの関係を変えたいと思っています。そしてその賛否を語るベースの情報をわかりやすく提供していきたいと考えています。★いよいよTPP交渉も大詰めです。にも関わらず秘密協定ということもあり、内容がわかりません。次の特集では、TPPやグローバリゼーションについて取りあげたいと考えています。アップは、年明け以降になりそうですが、よろしくお願いします。
2013.12.05
湯浅誠さんは言います。「社会活動家」とは「場をつくるひと」。世の中どうせ変わらないよって思ってる人も「場」があれば、よし、何かできること、やってみようって思うようになる★湯浅さんはそれを国のまん中に入って実践しています。生活困窮者ひとりひとりに合った自立支援を提供していく「パーソナルサポート事業」、生きづらさを抱えた人たちのための24時間ワンストップ型相談ダイヤル「よりそいホットライン」など★今まで「社会活動家」と言えば、反権力、過激派といったイメージ。それを湯浅さんは変えてしまった★たしかに課題先進国と言われる日本において、国とか自治体とか企業とかNPOとか政党とか関係なく、みんなで利害や意見の違いを超えて、よりよい方向を模索していかなければいけない。だからこそ湯浅さんのような場をつくる人=社会活動家が必要なんですね★「場づくり」は、日々の暮らしの中でもできると湯浅さん。例えば僕は仕事の打ち合わせ中のほんの数分間、あえて政治的な話をする。いま、騒がれてるあの法案、どう思います?とか。とてもうざい上司かもしれない。でも意外とみんな会話にのってくる。あ、そっか、みんな社会や政治に関心がないのではなく、それを話す場がないだけなのではないかと思ったりします★ソーシャルインクルージョン新聞Le toit【ルトワ】は、そんな「場づくり」のきっかけになれるといいなと思います。まずは湯浅さんのPVと記事をぜひご一読を。
2013.12.03
おはようございます!ルトワでは、NPOなどで頑張っている支援者たちのエピソードを漫画で伝える「ササエさん」という企画があります。その第一弾の主人公が、豊島こどもwakuwakuネットワークの栗林さん。栗林さんは自称「おせっかいおばさんん」。街を歩いていて、さみしそうな子や事情を抱えてそうな子を見つけては声をかけて自宅で面倒をみたりしていました。その活動の輪がどんどんとひろがり、NPOというカタチになりました。現在、栗林さんたちは、事情があってきちんとした夜ごはんを食べられない子のために「こども食堂」を開いています。親が夜の仕事をしていてお金だけを渡されて夜はコンビ弁当の子。貧しくて昨日からご飯を食べていない子。栗林さんは言います。「この支援活動で大切なことは、子供たちとつながることで親ともつながれるということ。貧しい子たちの親は、相当つらい状況の方々が多いから」夫のDVから逃れてきたママ。シングルマザーで昼も夜も働くママ。栗林さんは親とつながれて話ができて支援につなげられることが何よりもうれしいと言います。今日本では6人に1人が貧困児童で、シングルマザーの半数が貧困世帯という状況です。そんな中、僕たちは、これから支援する側と支援される側の「思い」に寄り添える漫画を制作することで、その事実を伝えていきたいと思います。イラストレーターのタキタマイコさんといっしょに担当します。漫画完成まで、しばしお待ちください。
2013.12.02
おはようございます。本日は写真家・高木俊幸さんの企画【原景our landscape】のご紹介です。高木さんは、福島第一原発の事故の前から日本各地の原発を写真におさめてきました。どの写真も美しく、それゆえに様々なメッセージを伝えてくれます★とくに僕がすごいと思ったのは、原発を「日本の原風景」として捉えているところでした。だからタイトルは「原風景」としての「原発の風景」ということで【原景our landscape】としました★原発は3.11前からもずっと日本にありました。人の暮らしとともにありました。反対運動もあり、地域活性化のために推進する人たちもいました。その事実に3.11以前のほとんどの日本人は目をつぶってきました。耳を傾けてませんでした。そのことをこの写真はつきつけてくれます★また高木さんは原発のある風景とともにそこに生きてきた人の姿もカメラにおさめています。今回登場している被災者今野秀則さんの言葉が印象的です。「いちばんつらいのは、人たちの絆や伝統や文化や歴史がなくなってしまったこと」★一見、安く大量にエネルギーが作れる原発を経済成長のためには必要だということで作ってきた。その結果、お金で買うことのできない大切なものをいっきに失ってしまったのだ。こんな不条理な事態を知ってしまった僕たちは意識を変えていなかければいけない。見て見ぬふりはやめる。何かおかしいなと思ったら知る、考える、伝え続けること。高木さんの次の取材がとても楽しみです。
2013.11.30
はじめまして。ルトワ編集長の山田エイジと申します。今日から新しいweb新聞をはじめます。ルトワはフランス語で「屋根」という意味。ひとつ屋根の下、誰もが支え合えるやさしい社会になれるといいなという想いを込めました。フランス語にしたのは本誌が掲げる「ソーシャルインクルージョン」発祥の地がフランスだからという理由とズバリ「なんとなくかっこいい」からです★社会問題とか政治とか経済とかって、とても堅苦しくて難しいイメージ。それを少しでも変えたいのです★日本はいま「課題先進国」と言われています。2020年は3人に1人が高齢者です。人口は減る。にも関わらず社会保障費は年々増加していく。労働者の4人に1人がワーキングプアで、相対的貧困率がアメリカについで先進国第2位。もう社会問題は、特別なひとの特別な問題ではありません。当たり前の日常です。だからこそ、普通に政治のこと社会のことを語れる世の中にしたいなぁと思います★また「課題先進国」ですから、日本が目指すべき社会モデルはどこにもありません。これからみんなで試行錯誤して作っていくしかないのです。そのためにはまず知ること。そして考えて、動けることは動いてみる。これからの社会はどうあるべきかについて、読者のみなさんと一緒に考えていけるメディアになっていきたいと思います。編集部全員、ボランティアでやっています。少しづつできる範囲で記事をアップしていきます。よろしくお願いします。